Mar 31, 2013

一本の糸

そう、不思議なもので初めは虫さんが自分の居場所を創るために吐いた一本の糸なんですよね。
絹糸の話です。
その糸をより合わせて絹糸を作り、染色、そして布地に仕立てていく。
キクラゲやなまこを初めて食べた人も凄いけど、虫が出した糸で絹糸を作った人もなかなかのものですよね。

何の話かというと、先日JR九州ホテルブラッサム博多中央の内覧会に出席したという話。
ロビーのアートワークのデザインと制作を担当したのでお呼ばれしたという訳です。


アートワークのコンセプトは「博多織」と「茜色」 
ざっくり感のあるコンセプトですが「茜色」からイメージする日本の美しさは沢山あるし「博多織」の方は博多織の老舗、筑前織物さんとお仕事をさせて頂いてる関係でちょっとお勉強させてもらってるので、2年前の私に比べれば知識豊富w 独鈷や華皿、献上柄満田彌三右衛門

筑前織物さんは博多織の産地問屋をされています。
自社で博多織の製造部門を持たれていて、内閣総理大臣賞を8年連続受賞。他の賞も入れると数えきれないくらい受賞されています。
一般のお客様に小売をしているわけではないので直接名前が出る事はなかなかないのですが、日本中の有名デパートや呉服屋さんで帯や着物が販売されていますので、お着物好きな方は一度は絶対商品をご覧になっていると思います。
帯はもちろん一級の芸術品の域なのですが、今度はその伝統と技術を生かして次のステージに進もうとされています。革新的な野望と希望を持って、質の高い新しい製品を作り出していこうとするパワーと、卓越した技術で伝統を守りつつ真摯に製品づくりに取り組んでいる姿を拝見していると「あー、日本っていいなーっ」ていう例のフレーズが聞こえてきます。
博多の街にそんな会社があるって、良くない?

さて、コンセプトの「茜色」から空想や妄想を繰り広げながらデザインしたテキスタイルデザインを、なんとも贅沢なことですが、その内閣総理大臣賞を何回も受賞されている伝統工芸士の方に織ってもらえるのです。
最高ですよね。


まず白い純国産絹糸を染色してもらいます。こちらは自分のイメージで「あの色とこの色と、そこの柄はこの色で、花びらの部分とココの柄はふっくらとした感じで」等と好き勝手なことを言うのですが、さすがはその道のプロ。打合せのときから、織り上げるための条件と出来上がった時の質感などを細かに教えてくださって、出来上がりのイメージを伝えただけで、日頃の織り方とは違う織り方まで提案してくださいます。
そうしてワクワク待つことひと月弱。

織り上がった布の上品な光沢と発色、花びらの一枚一枚のふっくらさ加減、デザインしたとおりの配色。感動モノです。
元はあの髪の毛より細い縦糸と横糸のともすれば単純な繰り返しに、人の技術と手間と膨大な時間が重ねられて出来上がったものなのです。


そんな宝物のような布地を織り上げて頂いて、今度はこちらの腕の見せ所です。
立体の下地を制作してもらっていますので、その下地の上にその布を配置し、なんと贅沢にも本物の帯をカットして挿し色として配置して行きます。
帯にハサミを入れる時はいつでも無茶苦茶緊張します。


ホテルの方も筑前織物の方も気に入ってくださって、内覧会の時も担当の方に「見られた方が綺麗だって言ってくださいます」と言っていただいて。

その内覧会の時に、JR九州ホテルグループの小濱社長が部屋を案内してくださったのですが、その時色々お話ししていて「ツインのお部屋のベットの間にあるベッドサイドテーブルには、あえて配線やなんかをなにもつけていないんです。だから簡単に動かすことが出来て、ベットをくっつけたらハリウッドスタイルになります。小さいお子さんと一緒にご利用していただく時なんかはベッドの間に隙間がなくなるので安心なんですよ」と目を細めておっしゃっていたのが印象的。
お客様の事を、そんな風に気遣いできるトップが運営するホテルです。
サービスも安心も心地よいこと間違いなし。


そうそう、ロビーの奥に設置されている「光壁」も一見の価値ありです。
なんと壁一面がガラス出できていて、そのガラスの中に本物の博多織の帯がズラッと並んでいます。「光壁」という名のとおり帯が入っているのに光も通します。不思議でしょ? もちろんその帯も筑前織物さんの帯が贅沢に使われています。

カウンターの奥の飾り棚には九州各県の工芸品が並んでいますので、ホテルのロビーだけで九州一周出来ます。
博多にお仕事やご旅行で来られる際は是非! 4月8日 OPENです。
博多駅からも歩いて2分の好立地、全てがピカピカの新しいホテルです。
沢山利用してね。
1階のレストランもバールを併設していてお仕事帰りにちょっと立ち寄るには、いいスペースになってますよ。

あっ、お泊りの際はロビーのアートワークもちらっと見てね。

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